スンドゥブ(スンドゥブチゲ)といえば、真っ赤なスープにふわふわの豆腐が浮かぶ姿を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、本場韓国の家庭や食堂で食べられるスンドゥブには、必ずといっていいほど「ある野菜」が入っています。それがズッキーニです。
日本ではあまり馴染みがない組み合わせかもしれませんが、ズッキーニを加えることでスープに深い甘みが加わり、彩りも一気に鮮やかになります。この記事では、スンドゥブにズッキーニを入れる本場の理由や、日本で手に入る食材を使って本格的な味を再現する具体的な方法を分かりやすく解説します。
スンドゥブとズッキーニの相性は抜群!本場の韓国で定番な理由

スンドゥブチゲにズッキーニを入れるのは、決して珍しいことではありません。むしろ、韓国の食卓では非常に一般的な光景です。なぜこれほどまでに親しまれているのか、その理由を深掘りしていきましょう。
本場の韓国で愛される「エホバク」の存在
韓国でスンドゥブに使われるのは、厳密には「エホバク」と呼ばれる韓国カボチャです。見た目は日本のズッキーニにとてもよく似ていますが、少し皮が薄く、加熱するとトロッとした食感になるのが特徴です。韓国の家庭料理において、このエホバクは欠かせない万能野菜の一つです。
チゲ(鍋料理)やナムル、ジョン(ピカタのような料理)など、幅広いメニューに使われており、スンドゥブにおいても定番の具材となっています。エホバクが手に入りにくい日本や欧米では、代用としてズッキーニが使われることが多く、それが今や世界的なスタンダードなレシピとして定着しています。
ズッキーニもエホバクと同様に、煮込むことで甘みが増し、スパイシーなスープとの相性が非常に良いため、本場の味を再現するなら外せない食材と言えるでしょう。
ズッキーニがスープに与える深い甘みとコク
スンドゥブの魅力は、唐辛子の刺激的な辛さと、魚介や肉から出る複雑な旨みのハーモニーにあります。そこにズッキーニを加えると、野菜特有の優しい甘みがスープに溶け出し、全体の味をまろやかにまとめてくれる効果があります。
特に辛いものが苦手な方や、スープの塩気が強く感じられる場合、ズッキーニを入れることで味の角が取れ、最後まで飲み干したくなるようなコク深い仕上がりになります。ズッキーニ自体にはクセがないため、アサリの出汁や豚肉の旨みを邪魔することなく、しっかりと引き立ててくれます。
また、ズッキーニは油との相性が非常に良い野菜です。スンドゥブのベースとなる「タテギ(合わせ調味料)」を炒める際に、油に溶け出した成分がズッキーニに染み込むことで、噛んだ瞬間に旨みがじゅわっと広がる贅沢な味わいを楽しめます。
栄養バランスを整える野菜としての役割
スンドゥブは豆腐が主役の料理ですが、どうしても野菜不足になりがちです。そこにズッキーニを加えることで、ビタミンや食物繊維をバランスよく摂取できるようになります。ズッキーニにはカリウムも豊富に含まれており、塩分の摂りすぎが気になる鍋料理において嬉しい存在です。
さらに、ズッキーニの鮮やかな緑色は、真っ赤なスープの中で視覚的なアクセントになります。食欲をそそる見た目は、美味しさを感じる上で非常に重要な要素です。豆腐の白、スープの赤、そしてズッキーニの緑が揃うことで、食卓がより華やかになります。
本場では、健康を意識してたくさんの野菜を一度に摂取する文化が根付いています。ズッキーニを入れることは、美味しさを追求するだけでなく、体への思いやりが詰まった合理的な調理法なのです。
日本のズッキーニで本場の味を再現する選び方と切り方

本場のエホバクの代わりに日本のズッキーニを使う場合、いくつかのポイントを意識するだけで一気に本格的な仕上がりに近づけることができます。まずは、美味しいズッキーニの選び方から見ていきましょう。
新鮮で美味しいズッキーニの見分け方
美味しいスンドゥブを作るためには、鮮度の良いズッキーニを選ぶことが大切です。表面にツヤがあり、色が濃く均一なものを選んでください。太さが一定で、持ったときにずっしりと重みを感じるものは、水分をたっぷり含んでいて瑞々しい証拠です。
切り口(ヘタの部分)が乾燥しておらず、みずみずしさが残っているかどうかもチェックポイントです。大きすぎるズッキーニは中にス(空洞)が入っていたり、種が大きく食感が悪くなったりしている場合があるため、中くらいのサイズのものを選ぶのがベストです。
触ったときに皮に張りがあり、弾力を感じるものは加熱しても崩れにくく、スンドゥブの具材として適しています。反対に、皮が柔らかくなっているものは鮮度が落ちている可能性があるため避けるようにしましょう。
スープが染み込みやすくなるおすすめの切り方
スンドゥブに入れる際のズッキーニの切り方は、火の通りやすさと食べ応えの両立が重要です。本場で最も一般的なのは「いちょう切り」や「半月切り」です。厚さは5mmから8mm程度に揃えるのが良いでしょう。
この厚さであれば、豆腐が温まる頃にはちょうどよく火が通り、ズッキーニの食感を残しつつスープの旨みをしっかりと吸収させることができます。薄すぎると煮崩れて存在感がなくなってしまい、厚すぎると味が染み込む前に豆腐が煮えすぎてしまいます。
また、少し趣向を変えて「千切り」にするのもおすすめです。千切りにすると、麺のようにスープや豆腐と絡みやすくなり、独特の喉越しを楽しむことができます。その日の気分や、一緒に合わせる具材に合わせて切り方を変えてみてください。
皮をむくべき?食感を活かすための工夫
日本のズッキーニは、本場のエホバクに比べると少し皮が硬い傾向があります。そのため、「皮をむいた方がいいの?」と迷う方もいるかもしれません。基本的には、皮をむかずにそのまま使うのがおすすめです。皮に含まれる栄養や、鮮やかな緑色を活かすことができるからです。
もし皮の硬さが気になる場合は、ピーラーで縞目状に皮を剥く「鹿の子剥き」にしてみてください。こうすることで、見た目がオシャレになるだけでなく、皮の間からスープが染み込みやすくなり、食感も柔らかくなります。
特に小さなお子様や高齢の方が食べる場合は、皮をすべて剥いてから調理すると、口当たりがより優しくなります。ズッキーニの個性や食べる人に合わせて、ひと手間加えることで、より満足度の高い一品になります。
本場の味に近づくためのズッキーニ調理のポイント

ただ煮込むだけでも美味しいズッキーニですが、調理のタイミングや工夫次第で、そのポテンシャルをさらに引き出すことができます。ここでは、本場流のテクニックをいくつかご紹介します。
煮込むタイミングで変わる食感のバリエーション
ズッキーニを鍋に入れるタイミングによって、完成時の食感が大きく変わります。シャキシャキとしたフレッシュな食感を楽しみたい場合は、豆腐を入れる直前、あるいは豆腐を入れた後に加えて短時間で仕上げるのがコツです。
一方で、ズッキーニがトロトロに溶けそうな、柔らかい食感が好みであれば、スープを煮立てる最初の段階から投入しましょう。長く煮込むことでズッキーニの甘みがスープ全体に広がり、まろやかな味わいのスンドゥブになります。
本場の食堂では、ズッキーニに適度な歯ごたえが残っている状態が好まれることが多いようです。中火で3分から5分ほど加熱し、透明感が出てきたあたりが最もバランスの良い食べごろです。お好みの硬さを見つけてみてください。
炒めるひと手間で香ばしさをプラスする方法
煮込む前に、ズッキーニを軽く炒める工程を加えると、香ばしさがプラスされてより本格的な味になります。ごま油を熱した鍋で、ズッキーニの表面にうっすらと焼き色がつくまで炒めてから、スープや他の具材を加えます。
こうすることで、ズッキーニの甘みが凝縮されるだけでなく、油によるコーティング効果で煮崩れを防ぐことができます。また、ごま油の香りがズッキーニに移り、スープ全体の風味が格段にアップします。
この方法は、特に肉類(豚バラ肉や牛肉)を具材にする場合に効果的です。肉から出た脂でズッキーニを炒め合わせることで、動物性の旨みが野菜にしっかりと移り、深みのある味わいを作り出すことができます。
他の具材との火の通りを調整するコツ
スンドゥブには豆腐、魚介、肉、卵など、火の通る時間が異なる具材がたくさん入ります。ズッキーニは比較的火が通りやすい野菜ですが、アサリなどの貝類と一緒に調理する場合は注意が必要です。
アサリは加熱しすぎると身が縮んで硬くなってしまうため、ズッキーニを先に煮込んで柔らかくしてから、最後にアサリを加えるのが理想的です。こうすることで、ズッキーニは味染みバッチリ、アサリはふっくらとした完璧な状態で提供できます。
また、最後に卵を落とす場合は、ズッキーニが希望の柔らかさになったタイミングで卵を入れ、余熱や弱火で軽く火を通すと、すべての具材がベストな状態でまとまります。具材を投入する順番を意識するだけで、料理の完成度は驚くほど高まります。
スンドゥブは強火で一気に煮立たせるのが美味しさの秘訣ですが、ズッキーニを入れた後は少し火を弱めると、味が均一に染み込みやすくなります。
ズッキーニの甘みを引き立てる!スンドゥブの本格レシピと具材の組み合わせ

ここでは、ズッキーニを主役にした本場風スンドゥブの基本的な作り方と、相性の良い具材の組み合わせをご紹介します。市販のスンドゥブの素を使わなくても、お家で簡単に本格的な味が楽しめます。
出汁(ユクス)にこだわるスープの作り方
本場のスンドゥブの美味しさを支えるのは、しっかりとした出汁(ユクス)です。最もポピュラーなのは、煮干しと昆布を使った出汁です。余裕があれば、干しエビや椎茸を加えると、より深みのあるスープになります。
まず、鍋に水と煮干し、昆布を入れて火にかけ、沸騰直前で昆布を取り出します。その後10分ほど弱火で煮出して煮干しを取り除けば、旨みたっぷりのベーススープが完成します。この出汁が、ズッキーニの甘みを最大限に引き出してくれるのです。
時間が無い場合は、市販の「ダシダ(韓国の粉末出汁)」や鶏ガラスープの素で代用しても構いませんが、魚介系の出汁を使うことで、ズッキーニの持つ優しい風味と絶妙にマッチし、本場に近い味わいになります。
辛みと旨みの黄金比!調味料の合わせ方
スンドゥブの味の決め手となるのは、唐辛子粉、ごま油、ニンニクを合わせた「タテギ」です。このタテギをいかに美味しく作るかが、ズッキーニとの相性を左右します。
【本場風タテギの材料目安】
・韓国粉唐辛子:大さじ1〜2(お好みで調整)
・ごま油:大さじ1
・おろしニンニク:大さじ1/2
・醤油:大さじ1
・塩、コショウ:少々
弱火でごま油とニンニクを熱し、香りが立ったら粉唐辛子を加えて焦げないように炒めます。ここに醤油を加えてペースト状にすれば、香ばしく旨みの強いタテギが完成します。このペーストを先ほど作った出汁で溶き、ズッキーニを入れて煮込んでいきましょう。
粉唐辛子は必ず「韓国産」を使用してください。日本の唐辛子に比べて辛さがマイルドで甘みがあり、ズッキーニの風味を消さずに旨みを引き立ててくれます。この黄金比を守れば、お店のような本格的なスープが再現できます。
豆腐とズッキーニを主役にする仕上げの工程
スープにズッキーニを入れ、火が通ってきたら、いよいよ主役のスンドゥブ(おぼろ豆腐)を投入します。豆腐は包丁で切るよりも、スプーンで大きくすくって入れるのが本場流です。断面が不揃いになることで、スープがより絡みやすくなります。
豆腐を入れた後は、あまりかき混ぜないのがポイントです。豆腐が崩れすぎるとスープが濁ってしまうため、優しくスープをかける程度にとどめましょう。最後に長ネギの斜め切りを散らし、お好みで生卵を中央に落とせば完成です。
器の中で、豆腐の白とズッキーニの緑、そして卵の黄色が鮮やかに映えるはずです。熱々のうちに、スプーンで豆腐とズッキーニを一緒にすくって食べてみてください。ズッキーニから溢れる甘みが、辛いスープの中でホッとするアクセントになっているのを感じられるでしょう。
ズッキーニ以外にも!本場の味を再現するために欠かせない野菜と調味料

ズッキーニだけでも十分に美味しいですが、他にもいくつかの食材を加えることで、より本場の深みに近づくことができます。韓国の家庭でよく使われる名脇役たちをご紹介します。
魚介の旨みを凝縮させるアサリとエビ
本場のスンドゥブに欠かせないのが、アサリなどの貝類です。アサリから出る濃厚な出汁は、ズッキーニの甘みと合わさることで、スープの味を重層的にしてくれます。砂抜きしたアサリをたっぷり入れて、その旨みを余すことなくスープに溶け込ませましょう。
また、むきエビや冷凍のシーフードミックスを活用するのも良いアイデアです。特に小さなアミの塩辛(セウジョッ)を隠し味として少量加えると、一気にプロの味に近づきます。塩気が強いため、味を見ながら調整してください。
これらの魚介類は、加熱しすぎると硬くなるため、調理の終盤に入れるのが鉄則です。ズッキーニがある程度柔らかくなったタイミングで投入し、口が開いたらすぐに火を止めることで、最高の食感と旨みを両立できます。
ボリューム満点にするなら牛肉や豚肉をプラス
ガッツリとした食べ応えを求めるなら、肉類を追加するのがおすすめです。韓国では、細かく叩いた牛肉や、薄切りの豚バラ肉がよく使われます。肉の脂がスープに溶け出し、ズッキーニの甘みと絡み合って、非常に濃厚な味わいになります。
肉を入れる場合は、最初のタテギを作る工程で肉を一緒に炒めるのがポイントです。肉の表面を焼き固めつつ、唐辛子の色と香りを肉に移すことで、全体の味に一体感が生まれます。特に豚バラ肉の甘い脂は、ズッキーニとの相性が抜群に良いです。
牛肉を使う場合は、細切れ肉を醤油とニンニクで下味をつけてから使うと、肉自体の旨みが際立ちます。肉と野菜の旨みが凝縮されたスープは、ご飯が進むこと間違いなしの絶品おかずになります。
きのこ類で風味と食感にアクセントを加える
ズッキーニと同様に、本場のスンドゥブでよく見かけるのが「きのこ類」です。特にエノキタケやヒラタケ、シイタケなどが人気です。きのこは低カロリーでありながら、独特の旨み(グアニル酸)を持っており、スープの風味を豊かにしてくれます。
エノキタケはシャキシャキとした食感が楽しく、ズッキーニのトロッとした食感との対比が面白い組み合わせになります。シイタケは薄切りにして煮込むと、出汁としての役割も果たしつつ、肉厚な食べ応えをプラスしてくれます。
きのこ類もズッキーニと同様、煮込みすぎないほうが香りが活きます。これら複数の野菜や具材を組み合わせることで、一杯の鍋の中に多様な食感と味わいが生まれ、最後まで飽きずに本場の味を堪能することができます。
| おすすめ具材 | 役割・効果 | 入れるタイミング |
|---|---|---|
| ズッキーニ | 甘み、彩り、食感 | 中盤(豆腐の前) |
| アサリ | 濃厚な魚介出汁 | 終盤(仕上げ直前) |
| 豚バラ肉 | コク、満足感 | 序盤(炒める工程) |
| エノキタケ | 旨み、シャキシャキ感 | 終盤(豆腐の後) |
スンドゥブとズッキーニで本場の美味しさを堪能するポイントまとめ
ここまで、スンドゥブにズッキーニを入れる本場のスタイルについて詳しくご紹介してきました。最後に、大切なポイントを振り返りましょう。
本場の韓国では、ズッキーニに似た「エホバク」という野菜がスンドゥブの定番具材として愛されています。日本で再現するなら、新鮮なズッキーニを5〜8mm程度の半月切りにして使うのが最もおすすめです。ズッキーニを加えることで、スープに深い甘みが加わり、辛さがマイルドに引き立ちます。
美味しく仕上げるためのコツは以下の通りです。
・新鮮なズッキーニを選び、皮付きのまま使用して彩りを活かす。
・ごま油とニンニクで軽く炒めてから煮込むと香ばしさがアップする。
・アサリや豚肉、きのこ類と組み合わせて、味に深みを出す。
・韓国産の粉唐辛子を使い、ズッキーニの甘みと調和させる。
ズッキーニを入れるだけで、いつものスンドゥブがグッと本格的でヘルシーな一皿に変わります。豆腐の柔らかな食感と、スープの旨みを吸ったズッキーニの贅沢な味わいを、ぜひご家庭で楽しんでみてください。本場の知恵を取り入れることで、あなたの料理のレパートリーがさらに豊かになるはずです。



