スーパーやレストランで「アンガス牛」の文字を見かける機会が増えました。手頃な価格で手に入るため、食卓の強い味方ですが、一方で「アンガス牛はまずい」「硬い」といった声も耳にします。もしかしたら、あなたも一度はそんな風に感じたことがあるかもしれません。しかし、それは大きな誤解かもしれません。
アンガス牛は、実は世界三大肉用種に数えられるほど、世界中で高く評価されている牛肉なのです。 「まずい」と感じてしまうのには、和牛との違いや調理法など、いくつかの理由が考えられます。この記事では、アンガス牛がなぜ「まずい」と言われることがあるのか、その真相に迫るとともに、アンガス牛本来の魅力や特徴、そして、その美味しさを最大限に引き出す調理のコツまで、わかりやすく解説していきます。
この記事を読めば、アンガス牛へのイメージが変わり、きっとその美味しさの虜になるはずです。
アンガス牛はまずい?その噂の真相に迫る

「アンガス牛は美味しくない」という声は、本当なのでしょうか。この章では、なぜそのような評価が生まれるのか、その背景にある理由を探っていきます。和牛との根本的な違いや、実は高品質であるアンガス牛の真の姿に迫ります。
なぜ「まずい」と言われることがあるのか?
アンガス牛が「まずい」と感じられる背景には、いくつかの理由が考えられます。最も大きな要因は、日本人が慣れ親しんだ「和牛」との肉質の違いです。
和牛の最大の特徴は、サシと呼ばれる脂肪が筋肉の間にきめ細かく入った「霜降り」です。 このサシが、とろけるような食感と濃厚な脂の甘みを生み出します。一方、アンガス牛は赤身が主体で、サシは和牛ほど多くありません。 そのため、和牛のような「とろける食感」を期待して食べると、硬く感じたり、パサついていると感じたりすることがあります。 これは、アンガス牛が劣っているわけではなく、肉質の特性が異なるためです。
また、調理法も「まずい」と感じる原因の一つです。赤身が多いアンガス牛は、和牛と同じように高温で長時間焼きすぎると、水分が飛んで硬くなりやすい性質があります。 良かれと思ってしっかり火を通した結果、肉本来の美味しさが損なわれてしまうのです。さらに、輸入される際の鮮度の問題や、牛が育つ環境(牧草中心か穀物中心かなど)による風味の違いも、人によっては「臭み」や「物足りなさ」として感じられる場合があります。
和牛との違いが「まずい」の原因?
「アンガス牛がまずい」と感じる原因の多くは、和牛との絶対的な比較から来ています。 脂の甘みと柔らかさを重視する和牛と、赤身肉本来の旨味と食感を味わうアンガス牛では、美味しさの尺度が異なります。
以下の表で、両者の主な違いを比較してみましょう。
| 特徴 | アンガス牛 | 黒毛和牛 |
|---|---|---|
| 主な肉質 | 赤身が主体 | 豊富な霜降り(サシ) |
| 脂肪(サシ) | 適度に入っている | きめ細かく豊富に入っている |
| 食感 | しっかりとした肉質で、弾力がある | とろけるように柔らかい |
| 味わい | 肉本来の濃厚な旨味、あっさりしている | 脂の甘みと濃厚なコク |
| おすすめの食べ方 | ステーキ、ローストビーフ、ハンバーグ | すき焼き、しゃぶしゃぶ、焼肉 |
| 価格帯 | 比較的安価 | 高価 |
このように、両者には明確な違いがあります。和牛の「とろけるような食感」を基準にすると、アンガス牛が硬く感じられるのは当然かもしれません。 しかし、アンガス牛にはしっかりとした噛みごたえと、噛むほどに広がる赤身肉本来のパワフルな旨味という、和牛にはない魅力があります。この違いを理解することが、アンガス牛を美味しく味わうための第一歩と言えるでしょう。
実際は高品質で世界中で愛されるブランド牛
「まずい」というイメージとは裏腹に、アンガス牛は世界的に見れば非常に評価の高いブランド牛です。 正式名称を「アバディーン・アンガス」といい、イギリスのスコットランドが原産です。 その優れた肉質から、ショートホーン、ヘレフォードと並んで「世界三大肉用種」の一つに数えられています。
アンガス牛の肉質は、柔らかい赤身と適度なサシがバランスよく含まれているのが特徴です。 このバランスの良さが、しつこすぎず、それでいてジューシーな味わいを生み出します。 かつて赤身肉に持たれていた「硬くて美味しくない」というイメージを覆し、世界的な赤身肉ブームの火付け役ともなりました。
さらに、アンガス牛の品質を保証する厳格な認定プログラムも存在します。特に有名なのが、アメリカン・アンガス協会が管理する「CAB(サーティファイド・アンガス・ビーフ)」です。 これは、米国農務省(USDA)の基準をさらに上回る10項目の厳しい品質基準をクリアした、ごく一部のアンガス牛だけに与えられる称号で、アンガス牛全体の2割弱しか認定されない希少なものです。 このような確固たる品質基準があることからも、アンガス牛が決して「まずい牛肉」ではないことがわかります。
アンガス牛ってどんな牛?特徴を詳しく解説

世界中で愛されているアンガス牛ですが、具体的にはどのような牛なのでしょうか。ここでは、その歴史や主な産地、肉質の科学的な特徴、そして健康面でのメリットなど、アンガス牛の魅力をさらに深く掘り下げていきます。
アンガス牛の歴史と主な産地
アンガス牛の正式名称は「アバディーン・アンガス種」で、その名の通り、イギリス・スコットランド東部のアバディーンシャー州とアンガス州が原産です。 13世紀の記録にも残っているほど古くから存在する品種で、角がなく、全身が黒い毛で覆われているのが特徴です。
もともとはスコットランドの厳しい自然環境で育つ頑健な牛でしたが、その優れた肉質が注目され、世界中へと広まっていきました。現在では、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなどを中心に、世界各国で飼育されています。 日本には1916年に初めて輸入され、和牛との交配にも用いられた歴史があります。
産地によって飼育方法が異なるのも特徴の一つです。例えば、アメリカ産はトウモロコシなどの穀物飼料で育てられることが多く(グレインフェッド)、肉質が柔らかく、脂に甘みが乗りやすい傾向があります。 一方、オーストラリア産やニュージーランド産は広大な土地で牧草を食べて育つことが多く(グラスフェッド)、赤身の風味がより強く、栄養価が高いとされています。
見た目と肉質の特徴
アンガス牛の肉は、鮮やかな赤色で、和牛に比べて脂肪(サシ)が少ないのが見た目の特徴です。しかし、サシが全くないわけではなく、赤身の中に適度な脂肪がバランス良く含まれています。 この赤身とサシの絶妙なバランスが、アンガス牛の美味しさの秘密です。
肉質はきめ細かく、柔らかいのが特徴で、決して硬い肉ではありません。 むしろ、しっかりとした弾力があり、噛むたびに肉汁が溢れ出します。この「肉々しい」食感こそがアンガス牛の醍醐味であり、和牛の「とろける」食感とはまた違った満足感を与えてくれます。
栄養価の高さと健康志向のニーズ
アンガス牛は、美味しさだけでなく、その栄養価の高さからも注目されています。健康志向が高まる現代において、アンガス牛の赤身肉は非常に魅力的な食材です。
特に注目すべきは、高タンパク質・低脂質である点です。ある比較によると、和牛に比べてカロリーは半分以下、脂質は5分の1程度であるのに対し、筋肉や体の組織を作るのに欠かせないタンパク質は約1.8倍も多く含まれています。
さらに、貧血予防に役立つ鉄分や、エネルギー代謝を助けるビタミンB群も豊富です。 特に、赤血球の生成をサポートするビタミンB12は約1.5倍含まれているとされています。 このように、アンガス牛は美味しさと栄養を両立できる食材であり、トレーニングをしている方や、健康的に食事を楽しみたい方にとって、理想的な牛肉と言えるでしょう。
「まずい」と感じさせない!アンガス牛を美味しく食べる調理法

アンガス牛の魅力を最大限に引き出すには、少しのコツが必要です。ここでは、部位ごとのおすすめの食べ方から、家庭でできるステーキの美味しい焼き方、そして相性抜群のソースまで、アンガス牛を「最高のごちそう」に変える調理法を具体的にご紹介します。
部位ごとのおすすめの食べ方
アンガス牛も他の牛と同様に、様々な部位があり、それぞれに特徴と最適な調理法があります。部位の特性を理解することで、料理の幅がぐっと広がります。
| 部位 | 特徴 | おすすめの調理法 |
|---|---|---|
| リブロース | 赤身とサシのバランスが良く、きめ細かい肉質。旨味と風味が豊か。 | ステーキ、ローストビーフ、すき焼き |
| サーロイン | ステーキの王道。赤身の旨味と脂の甘みの両方を味わえる。 | ステーキ、グリル |
| ヒレ | 最も柔らかい部位。脂肪が少なく、上品な味わい。 | ステーキ(特に厚切り)、牛カツ |
| 肩ロース | 比較的脂肪が多く、濃厚な味わい。煮込むと柔らかくなる。 | 煮込み料理(シチュー、カレー)、薄切りで炒め物、すき焼き |
| バラ | 脂肪が多く、こってりとした味わい。骨付きは良いダシが出る。 | 焼肉(カルビ)、煮込み料理、牛丼 |
| モモ | 脂肪が少ない赤身肉。硬めだが、煮込むとホロホロになる。 | ローストビーフ、シチュー、煮込み |
| ハラミ・サガリ | 内臓肉(横隔膜)。柔らかく、独特の濃厚な旨味がある。 | 焼肉 |
ステーキにするならサーロインやリブロース、煮込み料理なら肩ロースやモモ肉というように、作りたい料理に合わせて部位を選ぶことが、美味しさへの近道です。特にアンガス牛は赤身の旨味が強いので、ローストビーフのように塊でじっくり火を通す料理にも非常に適しています。
美味しさを引き出す焼き方のコツ
アンガス牛のステーキを「まずい」「硬い」と感じてしまう最大の原因は、焼き方にあります。赤身肉は火を通しすぎると硬くなってしまうため、焼き加減が非常に重要です。以下のポイントを押さえるだけで、お店のようなジューシーなステーキに仕上げることができます。
- 焼く前に肉を常温に戻す
冷蔵庫から出してすぐの冷たい肉を焼くと、中まで火が通るのに時間がかかり、表面だけが焼けすぎて硬くなってしまいます。焼く30分〜1時間前には冷蔵庫から出し、必ず常温に戻しておきましょう。 - 焼く直前に塩・こしょうを振る
早くから塩を振ると、浸透圧で肉の水分(旨味)が外に出てしまいます。塩・こしょうは焼く直前に、少し高い位置から均一に振りかけるのがポイントです。 - 強火で表面を焼き固める
熱したフライパンに牛脂か油をひき、強火で片面を1分〜1分半ほど焼きます。ここでしっかりと焼き色をつけることで、肉の旨味を内部に閉じ込める「メイラード反応」が起こり、香ばしい風味も加わります。 - 裏返して弱火で火を通す
裏返したら火を弱め、肉の厚みによりますが、レアなら1分、ミディアムレアなら2分程度焼きます。 指で軽く押してみて、弾力を感じるくらいが目安です。 - アルミホイルに包んで休ませる
焼き上がったらすぐに切らず、アルミホイルに包んで5〜10分ほど休ませます。 これにより、肉内部の肉汁が全体に行き渡り、しっとりとジューシーな仕上がりになります。この工程が美味しさを左右する非常に重要なポイントです。
相性抜群のソースや調味料
アンガス牛のしっかりとした赤身の旨味は、様々なソースや調味料と相性抜群です。シンプルな味付けから、少し凝ったソースまで、いくつかおすすめをご紹介します。
- シンプルに塩・こしょう、わさび醤油
肉本来の味を最も楽しめる組み合わせです。特に、日本のわさび醤油は、アンガス牛のさっぱりとした赤身と非常によく合います。 ポン酢でいただくのもおすすめです。 - ガーリックバター醤油
食欲をそそる香りがたまらない定番ソースです。ステーキを焼いた後のフライパンに残った肉汁に、すりおろしニンニク、醤油、バター、お好みで赤ワインを加えて煮詰めれば、絶品ソースが完成します。 - オニオンソース
すりおろした玉ねぎと醤油、みりん、酒を合わせて作るソースは、甘みとコクがあり、ご飯が進む味わいです。玉ねぎの酵素には肉を柔らかくする効果も期待できます。 - ハーブソルトやスパイス
ローズマリーやタイムなどのハーブと一緒に焼くと、本格的で香り高いステーキになります。市販のハーブソルトや、クレイジーソルトなどを活用するのも手軽でおすすめです。
美味しいアンガス牛の選び方とおすすめのお店

せっかくアンガス牛を食べるなら、より美味しいものを選びたいですよね。この章では、スーパーで美味しいアンガス牛を見分けるための実践的なポイントや、品質の証である「CAB認定」について解説します。また、アンガス牛を最高の状態で味わえる人気レストランもご紹介します。
スーパーで選ぶ際のポイント
美味しいアンガス牛を選ぶには、いくつかの簡単なチェックポイントがあります。スーパーの精肉コーナーで、ぜひ以下の点に注目してみてください。
- 肉の色をチェックする
新鮮で美味しい牛肉は、鮮やかで明るい赤色をしています。逆に、黒ずんでいたり、茶色っぽく変色していたりするものは鮮度が落ちている可能性があるので避けましょう。ただし、肉が重なっている部分が暗くなるのは自然なことなので、表面の色をよく見ることが大切です。 - ドリップ(肉汁)が出ていないか確認する
パックの中に赤い液体(ドリップ)がたくさん出ているものは、肉の旨味成分が流れ出てしまっている証拠です。ドリップが少なく、肉の表面にツヤがあるものを選びましょう。 - 脂肪の色を見る
サシや肉の周りの脂肪の色も鮮度のバロメーターです。白や乳白色のものが新鮮で、黄色っぽくなっているものは品質が落ちている可能性があります。 - 肉の厚みとキメ
ステーキ用であれば、ある程度厚みがある方がジューシーに焼き上がります。また、肉のキメが細かいものほど、柔らかい傾向にあります。
これらのポイントを押さえるだけで、スーパーでも格段に美味しいアンガス牛に出会える確率が高まります。
信頼できる認定プログラム「CAB」とは?
より高品質なアンガス牛を選びたい時に、非常に信頼できる目印となるのが「CAB(サーティファイド・アンガス・ビーフ)」のロゴです。
CABは、アメリカン・アンガス協会によって1978年に設立された、厳しい品質基準プログラムです。 この認定を受けるためには、アンガス種の特徴を持つ黒毛の牛であることに加え、米国農務省(USDA)の格付け基準を上回る、科学的根拠に基づいた10項目の規格をすべてクリアしなければなりません。
その基準は非常に厳しく、主なものには以下のような項目があります。
- 脂肪交雑(サシの入り具合)が「適度(Modest)」以上であること
- 牛の成熟度が若く、肉質が柔らかいこと
- リブアイ(あばら肉の中心部)の面積が適切なサイズであること
これらの厳しい基準をクリアできるのは、アンガス牛の中でもわずか2割弱と言われており、「CAB」の称号はまさに選び抜かれた高品質の証なのです。 スーパーやレストランでこのロゴを見かけたら、それは風味、柔らかさ、ジューシーさのすべてにおいて優れたアンガス牛であることの証明になります。
アンガス牛が味わえる人気のレストラン
自宅での調理も良いですが、プロが手がけたアンガス牛の美味しさを体験するのもおすすめです。現在、多くのファミリーレストランやステーキ専門店で、アンガス牛がメニューに採用されています。
- ステーキ専門チェーン
「ステーキ宮」や「ビッグボーイ」などのステーキ専門レストランでは、アンガス牛のステーキを主力商品として提供しています。 部位やグラム数を選べるお店も多く、好みに合わせて本格的なステーキを楽しめます。 - ファミリーレストラン
「ココス」や「サイゼリヤ」といったファミリーレストランでも、手頃な価格でアンガス牛のステーキメニューが提供されています。 より気軽にアンガス牛の美味しさを試すことができます。 - ハンバーガーショップ
「フレッシュネスバーガー」など、パティにアンガス牛を使用しているハンバーガーチェーンもあります。 ジューシーで肉々しいパティは、アンガス牛の旨味を存分に味わえます。 - シュラスコレストラン
「バルバッコア」などのシュラスコ専門店では、塊のまま串に刺して焼き上げたアンガス牛を、目の前で切り分けてもらうスタイルで楽しめます。 様々な部位を食べ比べできるのも魅力です。
これらのお店では、アンガス牛の特性を熟知したプロが最適な火加減で調理してくれるため、アンガス牛本来の美味しさを存分に堪能することができるでしょう。
まとめ:アンガス牛がまずいという誤解を解き、魅力を再発見

この記事では、「アンガス牛はまずい」というキーワードを軸に、その噂の真相から、アンガス牛の本来の魅力、そして家庭で美味しく食べるための秘訣までを詳しく解説してきました。
アンガス牛が「まずい」と感じられる主な理由は、霜降りが特徴の和牛との単純な比較や、赤身肉に適した調理法が知られていないことにありました。 実際には、アンガス牛は世界三大肉用種に数えられるほど高品質な牛肉であり、しっかりとした赤身の旨味と、適度なサシがもたらすジューシーさが魅力です。
その特徴を正しく理解し、「常温に戻す」「強火で焼き目をつけ、弱火で火を通す」「焼き上がりに休ませる」といった調理のコツさえ押さえれば、家庭でも驚くほど美味しくアンガス牛を味わうことができます。また、高品質の証である「CAB認定」を目印に選ぶことで、さらに満足度の高い食体験が期待できるでしょう。
「まずい」という先入観は一度脇に置いて、ぜひアンガス牛の持つ、肉本来のパワフルな美味しさを再発見してみてください。きっと、あなたの食卓を豊かにしてくれる、頼もしい味方になるはずです。



コメント