スーパーの精肉コーナーやレストランのメニューで「アンガス牛」という言葉を目にする機会が増えましたね。手頃な価格で美味しいため人気が高まっていますが、一方で「アンガス牛は危険」といった情報を耳にして、不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、アンガス牛が危険と言われる背景にある理由から、実際の安全性、そしてアンガス牛ならではの魅力や美味しく食べるためのポイントまで、わかりやすく解説していきます。ホルモン剤や抗生物質の使用、過去のBSE問題など、気になる点についてもしっかりと掘り下げていきますので、この記事を読めば、アンガス牛に関する疑問や不安が解消され、安心して食卓に取り入れられるようになるはずです。
アンガス牛が危険と言われる理由とは?

多くの人に親しまれているアンガス牛ですが、なぜ「危険」というイメージが持たれることがあるのでしょうか。その背景には、主に海外産の牛肉に対するいくつかの懸念が存在します。ここでは、代表的な3つの理由について詳しく見ていきましょう。
ホルモン剤や抗生物質の使用に関する懸念
アンガス牛の主な生産国であるアメリカなど一部の国では、牛の成長を早め、効率的に生産するために成長促進ホルモン剤が使用されることがあります。 日本国内の牛への使用は禁止されているため、「海外産の牛肉はホルモン剤が使われていて危険」というイメージにつながっているようです。
ホルモン剤が残留した肉を長期間・大量に摂取した場合の健康への影響を懸念する声もあります。 同様に、病気の予防や治療のために使われる抗生物質についても、その残留が問題視されることがあります。
過去のBSE(牛海綿状脳症)問題の影響
2000年代初頭に世界的な問題となったBSE(牛海綿状脳症)、通称「狂牛病」も、輸入牛肉への不安感を残す一因となっています。 BSEは、牛の脳がスポンジ状になり、起立不能などの症状を示す病気です。
2003年12月にアメリカでBSE感染牛が発見されたことを受け、日本はアメリカからの牛肉輸入を一時的に停止しました。 この出来事が、「アメリカ産牛肉=危険」という印象を強く残したと考えられます。
現在では、BSEの原因とされる異常プリオンが溜まりやすい特定危険部位(SRM)の除去や、飼料規制といった対策が国際的に徹底されています。 これにより、牛肉を食べることによるBSE感染のリスクは、ほぼゼロに近いレベルまで管理されています。
飼育環境や肥育方法への不安
アンガス牛は広大な土地で大量に飼育されることが多く、その飼育環境やエサについて不安を感じる人もいます。例えば、飼料として使われるトウモロコシや大豆が遺伝子組み換え作物である可能性を懸念する声があります。
現在のところ、遺伝子組み換え作物が人間の健康に直接的な害を及ぼしたという報告は少なく、その安全性は国際機関によって評価されています。 しかし、消費者の中には依然として不安を感じる方もいるため、「NON-GMO(遺伝子組み換えでない)」といった表示のある製品を選ぶという選択肢もあります。
アンガス牛の安全性は確保されているの?

「危険」と言われる理由を知ると、ますます不安になってしまうかもしれません。しかし、日本に輸入されているアンガス牛は、様々な形で安全性が確保されています。ここでは、国の制度や具体的な取り組みについて見ていきましょう。
国の厳格な安全基準と検査体制
日本に輸入される牛肉は、食品衛生法に基づき、厳しい安全基準を満たす必要があります。輸入時には、国の検疫所が書類審査や現物検査を行い、基準に適合しないものは輸入が認められません。
この検査では、病原微生物の有無だけでなく、残留農薬や抗生物質、ホルモン剤などが基準値を超えていないかが厳しくチェックされます。 つまり、日本のスーパーやレストランで販売されているアンガス牛は、国の定めた安全基準をクリアしたものだと言えます。
ホルモン剤の残留基準と安全性評価
一部の国で使用が認められている成長促進ホルモン剤ですが、日本に輸入される牛肉については、残留基準値が設定されています。この基準値は、人が一生涯にわたって毎日摂取し続けても健康に影響がないとされる量に基づいて、科学的に定められたものです。
国際的にも、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同で運営するコーデックス委員会(国際食品規格委員会)において、ホルモン剤の安全性が評価され、基準値を守って使用すれば人体への影響はないとされています。 したがって、基準値内の残留であれば、安全性に問題はないと考えられています。
抗生物質の使用ルールと残留問題
家畜の病気を防ぐために使用される抗生物質についても、ホルモン剤と同様に厳格な使用ルールと残留基準値が定められています。 必要な場合にのみ適切な量で使用され、出荷前には体内に薬剤が残留しないよう、休薬期間が設けられています。
日本に輸入される際にも、この残留基準値を超えていないかがチェックされるため、私たちが口にするアンガス牛の安全性は確保されています。
トレーサビリティ・システムの導入
トレーサビリティとは、食品が「いつ、どこで、誰によって作られたか」を追跡できる仕組みのことです。日本では国産牛においてこの制度が整備されており、消費者は牛肉の生産履歴を確認できます。
輸入牛肉に関しても、輸出国における生産履歴の管理や、輸入時の記録によって、ある程度の追跡が可能になっています。アメリカン・ビーフでは、認定アンガス・ビーフ・プログラム(CAB)のような制度により、品質管理が行われています。 これにより、万が一問題が発生した場合でも、原因の究明や製品の回収が迅速に行える体制が整えられています。
そもそもアンガス牛ってどんな牛?

安全性について理解が深まったところで、改めて「アンガス牛」そのものについて見ていきましょう。どのような歴史を持ち、どんな特徴がある牛なのでしょうか。
アンガス牛の歴史と原産地
アンガス牛の正式名称は「アバディーン・アンガス」といい、原産地はイギリス・スコットランド東部のアンガス州とアバディーンシャー州です。 13世紀の記録にも残っているほど古くから存在する品種で、肉用牛として世界中に広まりました。
現在では、アメリカやオーストラリア、ニュージーランドなどを中心に世界中で飼育されています。 日本にも1916年に初めて輸入され、少数ながら北海道などで飼育されています。
見た目や性格の特徴
アンガス牛の最も分かりやすい特徴は、角がなく、全身が黒い毛で覆われていることです。 体型はやや小さめで丸みを帯びており、足が短いのも特徴の一つです。
性格は比較的おだやかで、環境への適応能力も高いとされています。 こうした飼育のしやすさも、世界中に普及した理由の一つと言えるでしょう。
肉質の特徴(赤身とサシのバランス)
アンガス牛の肉質は、柔らかい赤身と、適度なサシ(脂肪)のバランスが良いことが最大の特徴です。 かつて輸入牛肉に持たれがちだった「硬くてパサパサ」というイメージを覆し、赤身肉の人気を高めるきっかけにもなりました。
他の牛肉との違いは?

スーパーにはアンガス牛の他にも、国産牛やホルスタイン種など、様々な種類の牛肉が並んでいます。それぞれの違いを知ることで、料理や好みに合わせて最適な牛肉を選べるようになります。
国産牛(和牛)との違い
| 項目 | アンガス牛 | 国産牛(和牛) |
|---|---|---|
| 肉質 | 赤身とサシのバランスが良い | 融点の低い脂肪がきめ細かく入る「霜降り」が特徴 |
| 味わい | 肉本来のしっかりとした旨み | 柔らかく、とろけるような食感と豊かな風味 |
| 価格 | 比較的リーズナブル | 高価 |
| おすすめの食べ方 | ステーキ、ローストビーフなど | すき焼き、しゃぶしゃぶ、焼肉など |
最も大きな違いは「サシ」の入り方です。和牛が持つ、とろけるような食感の「霜降り」に対して、アンガス牛は赤身の旨みが主体です。 そのため、脂の多い肉が苦手な方や、ヘルシー志向の方にはアンガス牛が好まれる傾向があります。
また、「国産牛」は日本国内での飼養期間が最も長い牛の総称であり、品種を問いません。 一方、「和牛」は「黒毛和種」など特定の4品種のみを指す、という違いもあります。
ホルスタイン種との違い
ホルスタイン種は、主に牛乳を生産するための「乳用牛」として知られていますが、その肉も「国産牛」として販売されています。
ホルスタイン種の肉は、アンガス牛に比べて脂肪が少なく、赤身が中心です。肉質はやや硬めな傾向があるため、ひき肉や煮込み料理などに使われることが多くあります。価格はアンガス牛よりもさらに手頃な場合が多いです。
グラスフェッドビーフとの違い
「グラスフェッドビーフ」とは、飼育方法による分類で、「牧草のみを食べて育った牛」の肉を指します。一方、トウモロコシなどの穀物飼料で育てられた牛の肉は「グレインフェッドビーフ」と呼ばれます。
アンガス牛は、産地によって飼育方法が異なります。例えば、オーストラリア産は牧草で育つことが多く、アメリカ産は穀物で育てられるのが一般的です。
グラスフェッドビーフは、赤身が多く、肉本来の風味や香りが強いのが特徴で、栄養価が高いことでも注目されています。
美味しいアンガス牛の選び方と食べ方

アンガス牛の魅力は、なんといってもその美味しさと調理のしやすさです。ここでは、より美味しく味わうための選び方のポイントや、おすすめの調理法をご紹介します。
美味しい部位とおすすめの調理法
アンガス牛は赤身の旨みが強いので、その特徴を活かせるシンプルな調理法がおすすめです。
- サーロイン・リブロース: ステーキの王道部位。適度なサシがあり、柔らかくジューシーです。厚切りにしてステーキで味わうのが一番です。
- ヒレ: 最も柔らかい部位で、脂肪が少なく上品な味わいです。厚切りのステーキやビーフカツにおすすめです。
- 肩ロース: 赤身とサシのバランスが良く、濃厚な味わいが特徴。ステーキのほか、薄切りにしてすき焼きや焼肉、煮込み料理にも向いています。
- モモ: 脂肪が少ない赤身の部位。ローストビーフや煮込み料理に適しています。
上手な焼き方のコツ
アンガス牛のステーキを美味しく焼くには、いくつかのコツがあります。
- 焼く前に常温に戻す: 冷たいままだと火の通りが悪くなるため、焼く30分〜1時間前には冷蔵庫から出しておきましょう。
- 塩・こしょうは焼く直前に: 早く振りすぎると水分が出てしまうので、焼く直前に振るのがポイントです。
- 強火で表面を焼き固める: 熱したフライパンに油をひき、強火で両面に焼き色をつけ、肉の旨みを閉じ込めます。
- 火を弱めて好みの焼き加減に: 焼き色がついたら火を弱め、じっくりと中まで火を通します。
- 焼いた後に休ませる: アルミホイルに包んで数分休ませることで、肉汁が全体に行き渡り、しっとり仕上がります。
購入時にチェックしたいポイント
スーパーでアンガス牛を選ぶ際は、以下の点をチェックしてみてください。
- 肉の色: 鮮やかな赤色で、ツヤのあるものを選びましょう。黒ずんでいるものは鮮度が落ちている可能性があります。
- 脂肪の色: 脂肪は白く、きれいな色のものが新鮮です。
- ドリップの有無: パックの中に「ドリップ」と呼ばれる赤い液体が出ていないか確認しましょう。ドリップは肉の旨み成分なので、少ないものが良質です。
- 表示の確認: 産地や、「ホルモン剤不使用」「抗生物質不使用」といった表示がある場合は、選ぶ際の参考になります。
まとめ:アンガス牛の危険性を正しく理解して美味しく楽しもう

この記事では、「アンガス牛は危険?」という疑問にお答えするため、その背景にある理由から実際の安全性、そしてアンガス牛ならではの魅力まで詳しく解説してきました。
- 「危険」と言われる背景には、ホルモン剤や抗生物質の使用、過去のBSE問題、飼育環境への懸念などがある。
- 日本に輸入されるアンガス牛は、国の厳格な安全基準や検査体制によって安全性が確保されている。
- アンガス牛は赤身とサシのバランスが良い、柔らかくジューシーな肉質が特徴。
- その美味しさを活かすには、ステーキやローストビーフといったシンプルな調理法がおすすめ。
様々な情報がある中で不安を感じることもあるかもしれませんが、安全性に関する仕組みを正しく理解すれば、アンガス牛は安心して楽しめる美味しい食材です。手頃な価格で日々の食卓を豊かにしてくれるアンガス牛を、ぜひ様々な料理で味わってみてください。



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