とろけるような食感と、口の中に広がる豊かな旨味。霜降り肉は、特別な日のごちそうや、自分へのご褒美にぴったりの食材です。しかし、その美味しさの源である「脂(サシ)」が、時には「胃もたれの原因になるかも…」と心配になることはありませんか?「美味しいけれど、もう少しさっぱり食べられたら嬉しい」「カロリーが気になる」そんなふうに感じている方も多いのではないでしょうか。
実は、ほんのひと手間加える「油抜き」という調理法で、霜降り肉の悩みは解決できます。油抜きをすることで、余分な脂肪分をカットし、カロリーを抑えられるだけでなく、胃への負担も軽くなります。 さらに、味が染み込みやすくなるなど、料理の仕上がりをワンランクアップさせる効果も期待できるのです。
この記事では、誰でも簡単にできる霜降り肉の油抜きの方法から、料理別のコツ、そして気になる旨味や栄養の変化まで、詳しく解説していきます。正しい油抜きの方法を知って、罪悪感なく、もっと気軽に美味しい霜降り肉を楽しみましょう。
霜降り肉の油抜きはなぜ必要?知っておきたい4つのメリット

霜降り肉の魅力である脂ですが、摂りすぎると胃もたれやカロリー過多につながることもあります。 油抜きをすることで、こうした悩みを解消し、より美味しくヘルシーに霜降り肉を楽しむことができます。ここでは、油抜きがもたらす嬉しいメリットを4つのポイントに分けて詳しくご紹介します。
胃もたれや胸やけを防ぎ、さっぱり美味しく
霜降り肉を食べた後に、胃が重く感じたり、胸やけがしたりした経験はありませんか?これは、霜降り肉に含まれる豊富な脂肪分が原因のひとつです。 脂肪は消化に時間がかかるため、一度にたくさん摂取すると胃腸に負担がかかり、不快な症状を引き起こすことがあります。 特に、年齢と共に胃腸の機能が低下してきたり、体調が優れなかったりすると、若い頃は平気だった霜降り肉でも胃もたれを感じやすくなることがあります。
脂を適度に落とすことで、肉本来の赤身の旨味や甘みが引き立ち、こってりとした味わいがマイルドになります。 これにより、たくさん食べても飽きが来ず、最後まで美味しくいただくことができるでしょう。 脂っこさが苦手な方や、ご高齢の方、小さなお子様と一緒に霜降り肉を楽しむ際にも、油抜きはぜひ取り入れたい下処理です。
気になるカロリーを大幅にカット
霜降り肉の美味しさは格別ですが、やはり気になるのがカロリーです。脂質は1gあたり9kcalと、たんぱく質や炭水化物の4kcalに比べて倍以上のエネルギー量を持っています。 そのため、サシが細かく入った霜降り肉は、赤身肉に比べてどうしてもカロリーが高くなりがちです。
ダイエット中の方や、健康のために脂質の摂取量をコントロールしている方にとって、これは大きな悩みどころでしょう。しかし、油抜きをすることで、この問題を解決できます。
例えば、茹でる・湯通しするといった調理法では、溶け出した脂をお湯と一緒に取り除くことができるため、肉100gあたり最大で30~40%もの脂質を減らせる場合もあります。 フライパンで焼く場合でも、出てきた脂をキッチンペーパーでこまめに拭き取るだけで、余分なカロリー摂取を抑えることが可能です。 このように、簡単なひと手間で大幅なカロリーカットが実現できるのは、油抜きの大きなメリットと言えるでしょう。
味が染み込みやすくなり、料理がワンランクアップ
油抜きは、ヘルシーになるだけでなく、料理の仕上がりを格段に良くしてくれるというメリットもあります。肉の表面を覆っている余分な脂を取り除くことで、調味料が肉の内部まで浸透しやすくなるのです。
すき焼きや牛丼、しぐれ煮などの煮込み料理を作る際に、油抜きをした肉を使うと、割り下や煮汁の味がしっかりと染み込み、より深みのある味わいになります。肉に味が入りやすくなる分、濃い味付けにする必要がなくなり、減塩にもつながるかもしれません。
また、肉の表面をさっと湯通しする「霜降り」という下処理は、日本料理で古くから用いられている技法です。これは、余分な脂や臭みを取り除くだけでなく、肉の表面のたんぱく質を固めることで、内部の旨味を閉じ込める効果も狙っています。油抜きは、まさに理にかなった美味しい調理法なのです。
アクや臭みが減って、見た目も美しく
肉を煮込むと、鍋の表面に灰汁(アク)が浮き上がってきます。このアクの正体は、肉の血液や余分なたんぱく質、そして脂などが固まったものです。アクをこまめに取り除かないと、料理に雑味や臭みが移り、見た目も損なわれてしまいます。
調理中の手間が省けるだけでなく、煮汁が濁りにくくなるため、澄んだ美しい仕上がりになります。 特に、おもてなし料理や、素材の味を活かしたい繊細な味付けの料理を作る際には、このメリットが大きく活かされるでしょう。余分な脂と一緒に肉特有の臭みも取り除かれるため、牛肉が苦手な方でも食べやすくなるという効果も期待できます。
初心者でも簡単!霜降り肉の基本的な油抜き方法

霜降り肉の油抜きと聞くと、少し難しそうに感じるかもしれませんが、ご家庭で誰でも簡単にできる方法がいくつもあります。ここでは、代表的な4つの油抜き方法を、それぞれの特徴やコツとあわせてご紹介します。料理や目的に合わせて最適な方法を選んでみてください。
【王道】下茹で・湯通し(霜降り)
最も効果的に油を抜くことができるのが、お湯を使う方法です。 特に煮込み料理やすき焼き、しゃぶしゃぶなどに適しています。
やり方:
- 鍋にたっぷりのお湯を沸かします。沸騰したら少し火を弱め、80〜90℃(グラグラと沸騰する直前)くらいに保ちます。
- 霜降り肉を1枚ずつ、または少量ずつお湯にくぐらせます。
- 肉の色が白っぽく変わったら、すぐに引き上げます。薄切り肉なら10〜20秒、厚切りの場合は30秒〜1分ほどが目安です。
- ザルにあげて、しっかりと水気を切ります。
冷しゃぶやサラダに使う場合は、茹で上がった肉を氷水に取ると、身が引き締まりパサつきを防げます。 ただし、長くつけすぎると旨味が逃げて水っぽくなるので、冷えたらすぐに引き上げましょう。
| メリット | デメリット | 向いている料理 |
|---|---|---|
| 最も油をしっかり落とせる | 旨味も逃げやすい | すき焼き、しゃぶしゃぶ |
| アクや臭みも取れる | 肉が硬くなりやすい | 煮込み料理(カレー、シチュー) |
| 煮汁が濁らない | 手間がかかる | 牛丼、しぐれ煮 |
【香ばしさUP】フライパンで焼き付ける
ステーキや焼肉など、焼き料理の美味しさを損なわずにカロリーをカットしたい場合におすすめなのがこの方法です。 肉の表面を焼くことで脂を溶かし出し、香ばしさをプラスする効果もあります。
やり方:
- フライパンを中火で熱し、油はひかずに霜降り肉を入れます。
- 肉から脂が溶け出してくるので、キッチンペーパーでこまめに拭き取ります。
- 両面に焼き色がついたら、肉を取り出します。ステーキの場合は、ここからオーブンで火を入れたり、アルミホイルに包んで休ませたりします。
特に、グリルパンや網目のついたホットプレートを使うと、溶け出した脂が下に落ちるため、より効率的に油抜きができます。 この方法は、湯通しに比べて肉の旨味を逃しにくいのが特徴です。
【手軽さNo.1】キッチンペーパーで拭き取る
最も手軽で、どんな料理にも応用できるのがキッチンペーパーを使う方法です。調理中に出てきた余分な脂をその都度吸い取るだけで、手軽にカロリーダウンができます。
やり方:
- 焼く場合: フライパンで肉を焼いている最中に出てきた脂を、数回に分けてキッチンペーパーで拭き取ります。
- 煮る場合: 煮込み料理などで表面に浮いてきた脂を、キッチンペーパーをかぶせるようにして吸い取ります。アク取りシートを使うのも良いでしょう。
- 調理後: 焼き上がったステーキや焼肉を、食べる直前にキッチンペーパーで軽く押さえて、表面の余分な脂をオフします。
この方法は、他の方法と組み合わせて行うことで、さらに効果が高まります。 例えば、下茹でした肉をさらにフライパンで炒める際に、出てきた水分と脂を拭き取るなど、ひと手間加えることで、よりさっぱりと仕上げることができます。特別な道具も必要なく、思い立った時にすぐ実践できるのが最大の魅力です。
【ヘルシー】蒸して余分な脂を落とす
「蒸す」という調理法も、ヘルシーに油を抜くのに非常に有効です。 蒸し器やせいろを使うことで、肉の旨味を保ちながら、余分な脂だけを下に落とすことができます。
やり方:
- 蒸し器やせいろに、キャベツやもやしなどの野菜を敷きます。
- その上に霜降り肉を重ならないように並べます。
- 湯気の上がった鍋にセットし、蓋をして肉に火が通るまで蒸します。
肉から出た脂と旨味を下の野菜が吸ってくれるため、野菜も一緒に美味しく食べられるというメリットがあります。ポン酢やごまだれなど、さっぱりとしたタレでいただくのがおすすめです。
油を使わないだけでなく、肉が水蒸気によってしっとりと柔らかく仕上がるのも蒸し料理の嬉しいポイントです。 しゃぶしゃぶ用の薄切り肉はもちろん、少し厚みのある肉でも美味しく作れます。健康志向の方には特におすすめしたい調理法です。
料理別!油抜きを活かすおすすめレシピ

油抜きの基本がわかったところで、次は実践編です。いつもの料理に油抜きのテクニックを取り入れるだけで、味わいが大きく変わります。ここでは、代表的な牛肉料理に合わせた油抜きのコツと、より美味しく仕上げるためのポイントをご紹介します。
すき焼き・しゃぶしゃぶでの油抜きのコツ
すき焼きやしゃぶしゃぶは、霜降り肉の美味しさを存分に味わえる人気の鍋料理です。しかし、煮込むうちに肉から出た脂で、後半は味がくどく感じてしまうことも。そんな時に油抜きが活躍します。
すき焼きの場合:
本格的なすき焼きでは、最初に牛脂を熱して肉を焼きますが、ヘルシーに仕上げたい場合は、肉を焼く工程を省き、割り下で「煮る」ことから始めます。さらにさっぱりさせたいなら、あらかじめ肉をさっと湯通ししておくのがおすすめです。 余分な脂が抜けているため、アクが出にくく、割り下が濁らず上品な味わいに。 また、肉が硬くなる原因と言われるしらたきは、肉とは少し離れた場所で煮ると良いでしょう。
しゃぶしゃぶの場合:
しゃぶしゃぶは、調理法自体が油抜きに適しています。ポイントは、お湯の温度を70〜80℃の沸騰しない状態に保つこと。 高温すぎると肉が硬くなり、旨味も逃げてしまいます。 お湯に少量の酒や昆布を加えておくと、肉の臭みが消え、風味が増します。 1枚ずつ丁寧に泳がせ、肉の色がほんのりピンク色に変わった瞬間が引き上げのベストタイミングです。 ポン酢に大根おろしをたっぷり加えると、消化酵素の働きでさらにさっぱりといただけます。
牛丼・しぐれ煮をさっぱり仕上げる方法
甘辛い味付けが食欲をそそる牛丼やしぐれ煮も、霜降り肉で作ると脂が気になることがあります。油抜きをすることで、こってりしがちなこれらの料理も、最後まで美味しく食べられるさっぱりとした後味に仕上がります。
おすすめの方法:
時間がない場合は、フライパンで肉を炒め、出てきた脂をキッチンペーパーでしっかり拭き取ってから、玉ねぎや調味料を加えるだけでも効果があります。 この方法だと、炒めた香ばしさがプラスされるというメリットも。どちらの方法でも、煮込む際にアクが出にくくなるため、調理の手間が省けて一石二鳥です。 冷めても脂が白く固まりにくいので、お弁当のおかずにもぴったりです。
ステーキや焼肉でのヘルシーな楽しみ方
ジューシーなステーキや焼肉は、霜降り肉の醍醐味をダイレクトに味わえる料理です。しかし、カロリーが気になるのも事実。油抜きを取り入れて、罪悪感なく楽しみましょう。
ステーキの場合:
まず、調理前に肉の塊についている目立つ脂身を包丁で切り落とす(トリミングする)のが基本です。 焼く際は、油をひかずにフライパンを熱し、肉自身の脂で焼き付けます。出てきた脂はキッチンペーパーでこまめに拭き取りましょう。
焼き網やグリルを使い、余分な脂を下に落としながら焼くのも非常に効果的です。 焼き上がった後は、大根おろしとポン酢をかけた和風ソースでいただくと、よりさっぱりとヘルシーに楽しめます。
焼肉の場合:
焼肉も、網焼きにすることで自然と脂が落ちていきます。 ホットプレートを使用する場合は、中央が盛り上がっていて脂が縁に流れるタイプのものを選ぶと良いでしょう。
また、食べ方も工夫してみましょう。サンチュやエゴマの葉といった野菜で巻いて食べることで、脂の吸収を穏やかにし、口の中をさっぱりとさせてくれます。 キムチやナムルなど、野菜の副菜を一緒に摂ることも、バランスの良い食事につながります。
霜降り肉の油抜きに関する注意点とQ&A

霜降り肉をヘルシーに美味しくしてくれる油抜きですが、やり方によっては風味を損ねてしまう可能性もあります。ここでは、油抜きを行う上での注意点や、よくある疑問についてお答えします。正しい知識で、油抜きの効果を最大限に引き出しましょう。
油抜きのデメリットは?旨味は逃げない?
油抜きの最大の懸念点は、「旨味や風味まで失われてしまうのではないか」ということでしょう。確かに、霜降り肉の美味しさは、脂の甘みやとろけるような口溶け、そして芳醇な香り(和牛香)に支えられています。 そのため、過度な油抜きは、肉がパサついたり、本来のコクが失われたりする原因になります。
旨味を逃さないコツ:
- 加熱は短時間で: 下茹でや湯通しは、肉の色が変わる程度の短い時間で済ませましょう。 長く加熱しすぎると、旨味成分である肉汁まで流れ出てしまいます。
- お湯の温度に注意: グラグラと沸騰したお湯ではなく、80〜90℃くらいの少し落ち着いた温度のお湯を使うことで、肉へのダメージを抑え、急激な収縮による旨味の流出を防ぎます。
- 方法を使い分ける: ステーキや焼肉など、肉そのものの味を楽しみたい料理では、湯通しよりも「焼いて脂を拭き取る」「網焼きで脂を落とす」といった方法がおすすめです。
脂は旨味の元である一方、酸化すると料理の風味を損ねる原因にもなります。余分な脂を適度に取り除くことは、肉本来のクリアな旨味を引き出すことにも繋がるのです。
どのくらい油抜きすればいい?時間の目安
油抜きをする時間の目安は、肉の厚さや種類、そしてどのような仕上がりにしたいかによって変わってきます。
- 薄切り肉(しゃぶしゃぶ、すき焼き用): 湯通しの場合、10秒〜20秒が目安です。 さっとお湯にくぐらせて、表面の色が変わったらすぐに引き上げるのがポイントです。
- 厚切り肉(ステーキ、角切り): 湯通しの場合、30秒〜1分ほどが目安です。 表面は白くなりますが、中心はまだ生の状態でOKです。この後の調理で火を通すことを計算に入れておきましょう。
- 煮込み料理用の塊肉: シチューやカレーに使う場合は、一度5分ほど下茹でして、アクと余分な脂をしっかり取り除くと、すっきりとした味わいの煮込み料理になります。
油抜きした肉の保存方法
油抜き(特に下茹でや湯通し)をした肉は、生の肉よりも傷みやすいため、保存には注意が必要です。
冷蔵保存の場合:
下茹でした肉は、粗熱が取れたらすぐに密閉容器や保存袋に入れ、冷蔵庫で保存します。調理で使う煮汁や出汁に浸した状態で保存すると、乾燥を防ぎ、しっとり感を保つことができます。 保存期間の目安は1〜2日です。なるべく早く使い切るようにしましょう。
冷凍保存の場合:
下茹でした肉の水分をキッチンペーパーでよく拭き取り、1回に使う分量ずつ小分けにしてラップでぴったりと包みます。その後、冷凍用の保存袋に入れて空気を抜き、冷凍庫で保存します。
使う際は、冷蔵庫で自然解凍するか、凍ったまま煮込み料理などに加えることができます。電子レンジでの解凍は、加熱ムラができて硬くなる原因になるので、あまりおすすめできません。冷凍した場合の保存期間の目安は2〜3週間です。
まとめ:霜降り肉の油抜きで美味しい食卓を賢く楽しむ

この記事では、霜降り肉の油抜きについて、そのメリットから具体的な方法、料理別のコツ、注意点まで詳しく解説してきました。
霜降り肉の油抜きは、単にカロリーをカットしてヘルシーにするだけでなく、胃もたれを防ぎ、味が染み込みやすくなり、アクや臭みを減らすなど、多くのメリットがあります。 「下茹で・湯通し」「フライパンで焼く」「キッチンペーパーで拭き取る」「蒸す」といった簡単な方法で、ご家庭でも手軽に実践することが可能です。
一方で、やりすぎてしまうと肉が硬くなったり、旨味が失われたりする可能性もあるため、「加熱は短時間で」「料理に合わせた方法を選ぶ」といったポイントを押さえることが大切です。
これまで「霜降り肉は好きだけど、脂がちょっと…」と敬遠していた方も、ぜひ油抜きのひと手間を試してみてください。きっと、霜降り肉の新たな美味しさを発見できるはずです。正しい知識とちょっとしたコツで、ごちそうである霜降り肉を、もっと賢く、もっと美味しく、心ゆくまで楽しみましょう。



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